RAG FAIR荒井健一さんと語り明かした夜。「感覚的な発声」を「論理」で紐解く

The following two tabs change content below.

伊藤 俊輔

京都大学法学部卒。解剖学・音声学等の科学的根拠に基づいた論理的な指導が支持され、これまで70を超える企業・大学・団体に対し、ボイストレーニング講座を実施。受講者は3,000人を超える。

こんにちは、ボイストレーナーの伊藤俊輔です。
本日は、いつもの発声解説とは少し趣向を変えて、ある「特別な体験」のご報告をさせてください。

実は先日、アカペラグループRAG FAIRの荒井健一さんから直接DMをいただき、ご挨拶も兼ねてライブにお邪魔させていただきました。

突然のご連絡に「えっ、あのRAG FAIRの荒井さん!?」と驚きを隠せなかったのですが、さらに驚いたのはその理由です。
なんと荒井さん、以前から僕のこのブログを読んでくださっていたそうなんです。

「伊藤さんの記事を参考にしていて、実際に声が出しやすくなったので、一度お話ししてみたかったんです。」

……プロの第一線で活躍されているボーカリストの方にそんな言葉をいただけるなんて、ボイストレーナーとして、これ以上の喜びはありません。

今回は、そんな素敵なご縁で実現したライブ参戦の様子と、その後の打ち上げで深夜まで語り合った「プロの現場における発声のリアル」についてお話ししたいと思います。

👇 実際に荒井さんが投稿してくださったポストがこちらです 👇

https://twitter.com/kenichi__arai/status/2001110084412481680?s=46&t=hQCE4B2mUJRkwTN5U3bwpA
目次

長年のファンも驚いた「歌声の進化」

今回、僕はRAG FAIRの大ファンである友人と一緒にライブに参加しました。
その友人は過去にも何度も彼らのライブに足を運んでいるのですが、ライブ中に興奮気味にこう言っていたのが印象的でした。

「以前よりも明らかに、荒井さんの声量が増してる……! すごくレベルアップしてる気がする!」

長年彼らの歌を聴き続けているファンの耳は誤魔化せません。
その言葉を聞いて、荒井さんが僕のブログ記事を読み、ご自身の感覚に落とし込んでくださった結果が、こうして実際の「音」として客席に届いているのだと確信し、密かに感動していました。

※荒井さんが特に参考にしていたという記事がこちら↓
声が小さい人でも大きな声が出せる「常識破り」な3つの方法

「分析」を忘れるほどのパフォーマンス

職業柄、普段誰かのライブに行くと、どうしても「〇〇筋が結構力んでいるな」とか「もっとこうすれば声が出やすくなるかも」といった技術的な分析ばかりしてしまうのが僕の悪い癖です(笑)。

しかし、今回のRAG FAIRのライブは、そんな職業病をすっかり忘れさせてくれるものでした。

メンバー全員が主役級の個性を持っていて、歌声の素晴らしさはもちろん、MCの掛け合いも最高。
エンターテイメントとして完成されていて、気づけば一人の観客として純粋に音楽を楽しんでいました。
「分析なんて野暮だ」と思わせるほどの圧倒的なパフォーマンス。
本当に素晴らしい時間をありがとうございました。

「一番信頼しているボイストレーナー」という言葉の重み

終演後、ご挨拶に伺った際、ボイストレーナーとして一生忘れられない出来事がありました。

荒井さんが、他のRAG FAIRメンバーの皆さんに僕を紹介してくださったのですが、その第一声が衝撃的だったのです。

「一番信頼しているボイストレーナーの伊藤さん」

……耳を疑いました。
日本の音楽シーンを牽引してきたグループの方々を前に、そんな風に紹介していただけるなんて。

その言葉を聞いた瞬間、嬉しさで胸がいっぱいになると同時に、身の引き締まるような思いがしました。

「信頼している」という言葉の重み。

その期待に恥じないよう、これからも誠実に「声」と向き合っていかなければと、プロとしての責任を深く噛み締めた瞬間でした。

打ち上げ、そして深夜の「発声談義」へ……

終演後、「よかったら打ち上げにも!」とお誘いいただき、お言葉に甘えて参加させていただきました。

本来ならそこで解散……となるはずが、発声についての話がどうしても尽きません。
結局、急遽同じホテルを取り、場所を変えて深夜まで長時間にわたり「ボイトレ談義」の延長戦を行うことになりました(笑)。

そこで話題の中心になったのが、「プロの現場で飛び交う『感覚的な言葉』の正体」についてです。

「丹田」「筒」「重心」……感覚を論理で翻訳する

荒井さんから、現場でよく耳にする指導やアドバイスについて、こんなご質問をいただきました。

「現場ではよく『丹田に力を入れて』とか、『身体を筒のように保って』、『重心を感じて』といった言葉を聞くんです。でも、具体的に身体をどう使うことが正解なのか、迷うことがあって……」

確かにこれらは、音楽の世界で古くから使われている言葉ですが、受け取り手によって解釈が変わりやすい「感覚的な表現」でもあります。

そこで僕は、解剖学や物理学的な視点から、「丹田」とは、「筒のように保つ」とは、「重心を感じる」とは、というテーマについて、一つひとつ「翻訳」をさせていただきました。
(※普段のレッスンでお伝えしているロジックを、膝を突き合わせてじっくり解説しました)

僕が解説をするたびに、荒井さんは「なるほど! あれはそういう意味だったのか!」「謎が解けました!」と、目を輝かせて喜んでくださいました。

プロとして第一線で活躍されている方であっても、こうした「感覚と言葉のズレ」に悩むことがある。
だからこそ、僕たちボイストレーナーが「感覚を論理(ロジック)で説明する」ことの重要性を、改めて強く感じた瞬間でした。

さらなる嬉しいご報告(RAG FAIR加藤さん)

打ち上げの席では、同じくメンバーの加藤慶之さんともお話しする機会がありました。

その際、加藤さんからも発声についてのご相談をいただき、僭越ながらその場でいくつかワンポイントのアドバイスをさせていただきました。

すると後日、荒井さんからこんな驚きのご連絡が届いたのです。

「あの後、加藤さんもライブでアドバイスを試してみたら、『声が出しやすくなった!』と報告がありましたよ!」

……これには本当に感動しました。
アドバイスを素直に受け入れ、すぐに実際のライブという大舞台で実践される加藤さんの柔軟性とプロ意識の高さ。
そして、その結果が「出しやすさ」に直結したという事実。

僕がお伝えしている「身体の仕組みに基づいた発声法」が、荒井さんだけでなく、他のプロフェッショナルな方にも即座に役立つものだと証明されたようで、トレーナーとして大きな自信をいただきました。

今後ともよろしくお願いします!

別れ際、荒井さんから「また発声に関して相談したいことがあれば、連絡します!」と言っていただき、「ぜひ! いつでも飛んできます!」とお答えしました。

荒井さんのような素晴らしいボーカリストの更なる進化に、僕の知識が少しでも役に立てるなら、こんなに嬉しいことはありません。

今回の経験を経て、僕自身もさらに勉強を重ね、プロ・アマ問わず「声」に悩むすべての人の力になれるよう、発声理論を磨いていきたいと思います。

荒井さん、最高の夜を本当にありがとうございました!

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!
目次