
伊藤 俊輔
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あなたは地声で歌うことができますか?
普段から地声で歌う習慣がある方にとっては、地声で歌うことは当たり前のことかもしれませんが、特に女性の合唱・声楽経験者の中には、地声で歌うことができないという方が少なくありません。
これは、合唱・声楽では、地声と裏声の境目で起こるブレイク(裏返り)を避けるために、すべての音域を裏声で発声するよう指導されていることによるものです。また、合唱・声楽経験者でなくても、普段から裏声混じりの柔らかい声で話しているという方も、地声で歌えないことが多いようです。
地声を使わないという長年の習慣から、地声を発声するための筋肉が衰えてしまい、例えばカラオケなどで歌おうとしたときに、地声での歌い方が分からないということになります。また、本人は地声で歌っているつもりでも、地声を発声するための筋肉が十分に働かず、裏声に近い、弱々しい地声で歌っている場合もあります。
そこで今回は、力強い地声で歌う方法について解説していきたいと思います。ここで紹介する方法で練習すれば、必ず地声で歌えるようになりますので、是非参考にしてみてください。
※『普段話をするときの声』を意味する場合の地声と区別するため、歌唱に使用する地声を『チェストボイス』と表現する場合があります。
目次
1.地声で歌うメリット
すべての音域を裏声で歌えるのであれば、地声は必要ないと考える方もいらっしゃるかもしれません。しかし、地声で歌うことには、以下のようなメリットがあるのです。
1-1.自分の個性が表現しやすい
地声は、裏声に比べて、自分本来の声色が出やすい声と言えます。合唱のように、1つのパートを複数人で声をそろえて歌う時には、個性を出さないようにすることが必要となる場合もありますが、ソロで歌う場合や各パートを一人で担当する場合などには、地声も取り入れて歌うことにより、自分の個性をより自然に表現することができるようになります。
1-2.歌える曲の幅が広がる
裏声は低音になるにしたがって弱くなっていくという特徴があり、すべての音域を、高音と同様に力強く発声することはできません。裏声のまま、低音域を無理に力強く発声しようとすることは、呼気で声帯を過剰に圧迫することとなり、のどを壊す原因にもつながります。地声でも歌えるようになると、無理なく広い音域を力強く歌えるようになるため、歌える曲の幅が一気に広がります。
地声と裏声の両方を使うことによって、その境目で起こるブレイク(裏返り)に抵抗感を持つ方もいらっしゃるかもしれません。しかし、地声と裏声は、トレーニング次第で滑らかに繋げることが可能です。詳しくは地声と裏声をスムーズに繋げる3つの手順をご覧ください。
1-3.地声のような力強いミックスボイス(ミドルボイス)を作り出すことができる
例えば、DREAMS COME TRUE(ドリカム)の吉田美和さんやSuperflyさん、MISIAさんのように高音域を力強く歌うためには、ミックスボイス(ミドルボイス)というテクニックが必要となります。このミックスボイスを作り出すには、地声で使う筋肉と裏声で使う筋肉が同程度の強さを持つ必要があります。普段裏声ばかり使っている人は、裏声の筋肉ばかりが発達しているおり、地声の筋肉はあまり育っていません。積極的に地声で歌うことにより、地声の筋肉を鍛えることができれば、地声のような力強いミックスボイスを作り出すことが可能となるのです。
※ミックスボイス(ミドルボイス)については、1オクターブ高い声だって楽に出せるミックスボイスとはをご覧ください。
2.地声で歌うことができない原因
地声で歌うことができない原因についてご理解いただくために、まずは地声と裏声の違いについて簡単に解説していきます。
のどの中には、声帯という二枚のひだがあり、呼吸時には開いた状態に、発声時には閉じた状態になります。この閉じた声帯の間を息が通ることにより、声帯が振動し、声が作られます。
そして、地声を出す時には、声帯を閉じる筋肉が中心となって働くことで、声帯がしっかりと閉じ、声帯自体も分厚く、短くなり、その声色は力強く太いものとなります。
それに対して、裏声を出す時には、声帯を引き伸ばす筋肉が中心となって働くため、声帯の閉鎖は弱まり、声帯自体も薄く、長くなり、その声色は地声よりも弱々しく細いものとなります。
声を出す時は、声帯を閉じる筋肉と声帯を引き伸ばす筋肉が連動して働いているため、どちらか一方の筋肉だけが働くということはないのですが、声帯を閉じる筋肉が優勢に働くと地声、声帯を引き伸ばす筋肉が優勢に働くと裏声になるというわけです。
普段裏声だけで歌う習慣がある人は、声帯を引き伸ばす筋肉ばかりを使っているために、声帯を閉じる筋肉が衰え、地声で歌うことができなくなってしまうのです。
※綺麗な裏声の出し方については、【ファルセット】誰でも簡単!綺麗な裏声を出す7つのコツ!をご覧ください。
3.力強い地声で歌うための3つのコツ
力強い地声で歌うためには、声帯をしっかりと閉じる習慣を身につけることが必要です。ここからは声帯を閉じるコツについて解説していきます。
3-1.地声で歌うことに対する抵抗感をなくす
長年裏声で歌うよう指導されてきたことから、地声は『のどに悪い声だ』、『地声で歌うことは良くないことだ』と思い込んでしまっている場合があります。
また、いざ地声で歌おうとしても、声帯を閉じる筋肉が衰えているため、普段から地声で歌っている方よりも負担を感じることが多く、『これは間違った発声方法に違いない』と思い、練習を途中でやめてしまうこともよくあります。
声帯を閉じる筋肉が鍛えられていけば、その負担も徐々になくなっていきます。地声は決してのどに悪い声ではなく、ただ、地声を出すための筋肉が衰えているだけなので、適切なトレーニングをすれば、誰でも地声で歌うことができるようになります。今までの固定観念を思い切って取り払い、安心して地声で歌う練習を続けてください。
3-2.声帯を閉じる感覚をつかんで声を出す
声帯が閉じている感覚をつかみ、その状態のまま声を出すことで、地声で歌うことができるようになります。
3-2-1.息を止めて声帯を閉じる感覚をつかむ
声帯は、呼吸時には開いた状態にあり、発声時には閉じた状態になりますので、息を止めることで声帯を閉じる感覚をつかむことができます。まず『あ』の口を作り、次の録音のように、息を止めてみてください。
このとき、のどの奥の方で何かが閉じたような感覚があると思います。これが声帯が閉じた感覚です。息の止め方が強すぎると、喉が締まってしまいますので、強く止めすぎないように注意してください。
3-2-2.エッジボイス(ボーカルフライ)で声帯を閉じながら声を出す感覚をつかむ
今度は声帯を閉じながら声を出す感覚をつかみます。
息を止めて声帯を閉じる感覚がつかめたら、そのまま、できるだけ低い音で小さな声を出そうとしてみてください。するとこんな声が出ると思います。
これは、声帯が上手く閉じた時に出すことができる声で、エッジボイス(別名ボーカルフライ)と呼ばれています。ホラー映画の『呪怨』で登場する声なので、そちらでご存知の方もいらっしゃるかもしれません。
この音をしっかり鳴らすことで、声帯を閉じながら声を出す感覚を身につけることができます。
※そもそもエッジボイスが上手く出せないという方は、エッジボイスの出し方がわからない人が押さえるべき6つのことも併せてご覧ください。
3-2-3.エッジボイス(ボーカルフライ)を持ちあげて声を出す
エッジボイス(ボーカルフライ)で声帯を閉じながら声を出す感覚がつかめたら、今度はそのエッジボイスを持ちあげて声を出す練習をしてみましょう。息漏れの少ない力強い声が出たら、それが地声です。いつでも地声を出せるように、何度も繰り返し練習してみましょう。
3-2-4.地声で話す練習をする
地声を出すことができるようになったら、日常会話の中でどんどん使ってみましょう。長年の習慣を変えるためには、かなりの時間が必要となります。地声を使う時間が長ければ長いほど、地声で歌えるようになる日も近くなりますので、積極的に毎日地声を使っていきましょう。
3-3.話し声の延長で声を出す
歌は裏声でしか歌えないけれど、話し声は地声という方もいらっしゃいます。そのような場合は、話し声の延長で歌を歌うことで、地声で歌うコツをつかめることがあります。
話し声を徐々に歌声にしていきます。ここでは、最後の母音が『あ』となるように『こんにちは』という言葉で練習しています。慣れてきたら他の母音で終わる言葉にも挑戦してみてください。このとき音の高さは気にする必要はありません。普段話をしている高さで練習してみてください。
4.まとめ
地声で歌うメリット
- 自分の個性が表現しやすくなる
- 歌える曲の幅が広がる
- 地声のような力強いミックスボイス(ミドルボイス)を作り出すことができる
力強い地声で歌う3つのコツ
- 地声で歌うことに対する抵抗感をなくす
- 声帯を閉じる感覚をつかんで声を出す
- 話し声の延長で声を出す